近年、企業のクラウドサービス活用が一般化し、リモートワークも浸透してきました。一方、通信の安定性や速度、セキュリティにかかわる「クラウド回線」について、「種類が多くて違いがわからない」「思ったより速度が出ない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
快適で安全なクラウド活用のためには、自社に適した回線選びが欠かせません。
この記事では、クラウド回線の基礎知識、種類と特徴、最適な回線を選ぶためのポイントに加えて、通信速度トラブルの原因と対策について解説します。
企業のクラウド活用が進む今、通信速度やセキュリティ面などへの関心が高まっていることから、クラウド回線の重要性は増しています。最初に、クラウド回線の基礎知識や一般的なインターネット回線との違い、必要性について解説します。
そもそもクラウドとは、インターネットを通じてサーバーやストレージ、ソフトウェアといったITリソースを提供するサービスのことです。
多くのクラウドサービスは通常のインターネット回線でも利用できますが、ビジネスで利用する場合、通信速度や安定性、セキュリティ面でより高いレベルを求められます。
クラウド回線とは、クラウドサービスをより快適かつ安全に利用するための回線です。一般的なインターネット回線とは異なり、契約した利用者向けの帯域を確保したり、閉じたネットワークを利用したりすることで、高速で安定した通信環境と、より高いセキュリティを実現します。
クラウド回線と一般的なインターネット回線のおもな違いとして、通信の安定性や速度、セキュリティ、コストが挙げられます。
特徴 | クラウド回線 | 一般的なインターネット回線 |
---|---|---|
通信の安定性 | 非常に高い | 混雑時に不安定になる場合がある |
通信速度 | 高速 | 混雑時に速度低下する場合がある |
セキュリティ | 非常に高い | 外部からの攻撃リスクがあり、別途対策が必要 |
コスト | 高い | 比較的安い |
クラウド回線は専用の回線を使用するため、安定した高速な通信が可能です。一方、一般的なインターネット回線は多くの人と共有して使用するため、混雑時には速度が低下したり、通信が不安定になったりすることがあります。
セキュリティ面では、クラウド回線は閉域網や専用線で通信環境を構築するため安全性が高く、不正アクセスなどのリスクを抑えられます。反対に、インターネット回線は外部からの攻撃を受けやすく、より強固なセキュリティ対策が必要です。
ただしコスト面では、クラウド回線は高い性能とセキュリティを提供する分、インターネット回線よりも費用が高くなります。
クラウド回線の必要性が高まっている背景にあるのは、企業におけるクラウドサービスの利用の増加とリモートワークの普及です。
ITインフラの構築・運用の形態には、サーバーやIT機器、ソフトウェアなどを自社で保有・運用していく「オンプレミス型」と、クラウド事業者が提供するサービスを利用する「クラウド」型があります。
オンプレミス型はシステムのカスタマイズや独自のセキュリティ対策ができる反面、初期費用が高く、システム構築や維持管理にも手間がかかります。
これに対してクラウド型は、できるカスタマイズは限定的であるものの、自社で機材を保有する必要がなく、初期費用や運用コストを抑えられる点が大きなメリットです。加えて、オンプレミス型よりもスピーディーに導入でき、システムの保守やメンテナンスはサービス提供事業者が行なってくれることから、クラウド型の利用は増加傾向にあります。
また、リモートワークの普及により、オンライン会議やクラウドストレージ、SaaSなどの業務アプリケーションの利用も増え、扱うデータ量も増加していることも、クラウド回線が必要とされる要因の一つです。
このようななかで、従来のインターネット回線よりも安定・高速・安全なクラウド回線の需要が高まっているのです。
クラウド回線にはいくつかの接続方式があり、速度や安定性、セキュリティ、コストなどの特徴が異なります。ここでは、代表的な4種類とそれぞれの特徴について解説します。
インターネット接続型は、既存のインターネット回線を利用してクラウドサービスに接続する方式です。新たに専用回線を準備する必要がないため、導入コストを抑えることができ、比較的短期間で利用を開始できます。
しかし、多くのユーザーと回線を共有することになるため、通信が混雑すると速度が低下したり、不安定になったりすることがあります。また、不正アクセスのリスクも高いので、別途でのセキュリティ対策は必須です。
インターネットVPN型は、既存のインターネット回線上に仮想的な専用線を構築し、通信内容を暗号化して送受信する接続方式です。インターネット回線を利用する点はインターネット接続型と同様ですが、通信データを暗号化することで、インターネット接続型よりもセキュリティを高めることができます。
ただし、通信速度や品質などは、ベースとなるインターネット環境の影響を受けます。
IP-VPN型は、通信事業者が提供する閉じたネットワーク(閉域網)を利用してクラウドサービスに接続する方式です。
一般的なインターネットを経由しないので、第三者による不正アクセスのリスクが低く、高いセキュリティを確保できます。また、帯域保障型回線を使用しているため、安定した通信速度が期待できます。
ただし、専用のネットワークを利用するため、インターネットVPN型などと比較するとコストが高くなる傾向があります。
専用線型は、拠点間を物理的な専用の回線で直接接続する方式です。完全に独立した回線を使用するので通信の混雑などを気にする必要はなく、高速で安定した通信ができます。
また、外部ユーザーの影響を受けないため、極めて安全性の高い接続方式です。
その反面、物理的な回線敷設が必要になることから導入までに時間がかかるうえ、4種類のなかでコストが最も高額になります。
続いて、自社に最適なクラウド回線を選ぶために確認すべき4つのポイントを解説します。
前章でご紹介したように、クラウド回線には「インターネット接続型」「インターネットVPN型」「IP-VPN型」「専用線型」といったさまざまな種類があります。それぞれ特徴が異なるため、自社の要件に合った接続方式を選ぶことが重要です。
具体的には、以下のような点を考慮するとよいでしょう。
自社の業務内容や扱う情報の重要度、予算などを考慮して、バランスの取れた接続方式を選びましょう。
帯域幅とは、通信回線が一定時間内に送受信できるデータ量の上限を示す値です。よく道路の幅(車線数)にたとえられますが、車線数が多いほど渋滞が起こりにくいのと同じように、帯域幅が広いほど多くのデータを一度にスムーズに流せるため、通信速度は速くなります。
反対に、帯域幅が不足すると通信速度が低下します。オンライン会議や大容量のファイル転送、クラウドサービスの利用など、安定した通信が必要な場合は、帯域確保や帯域保障のサービスを選ぶとよいでしょう。
ただし、必要以上に広い帯域幅を契約してしまうと、無駄なコストが発生してしまいます。そのため、自社の利用状況に必要な帯域幅を事前に把握し、通信量に応じた帯域幅を確保することが重要です。
クラウド接続は外部ネットワークを経由するため、不正アクセスや情報漏洩などのリスクがあります。そのため、セキュリティ対策が十分に施されている回線を選ぶことが重要です。
接続方式によってもセキュリティレベルは大きく異なり、一般的に安全性が高いのは専用線やIP-VPNといった閉域網を利用する方式です。
とはいえ、求められるセキュリティレベルは、企業の業種や規模によっても異なります。当然ながら、セキュリティ性能が高くなるほどコストも上昇するため、自社にとってコストとのバランスが取れたクラウド回線を選びましょう。
SLA(Service Level Agreement:サービス品質保証)とは、サービス提供事業者が利用者に対して、提供するサービス内容や品質レベルの基準を明確に定めたものです。万が一、定めた品質基準を満たせなかった場合の補償内容なども記載されています。
基準を定めるサービス内容の具体例は、「回線の稼働率」「通信の遅延時間」「故障が発生した場合の回復時間」などです。また、定めた品質基準を下回った場合に、利用料金の一部が返金されるといった規定が設けられていることもあります。
契約前にはSLAの内容をしっかり確認し、自社が求めるサービスレベルを満たしているか、また万が一の際の補償内容に納得できるかを判断することが大切です。
クラウド回線を導入しても、期待したほどの速度が出ない、あるいは以前より遅くなったと感じることがあるかもしれません。ここでは、クラウド回線の通信速度が低下するおもな原因と、それぞれの改善策について解説していきます。
クラウド回線の速度が遅くなる原因の一つが「帯域不足」です。
契約している帯域幅が、実際の業務で利用するデータ通信量に対して不足している場合、データの通り道が渋滞を起こし、通信速度が低下してしまいます。特に、多くの従業員が同時にアクセスする時間帯や、オンライン会議・大容量ファイルの送受信など、通信量が一時的に増える際に契約帯域幅を超えると速度が遅くなります。
帯域不足が原因の場合、契約プランを見直して帯域幅を増やすことで通信速度を改善できます。まずは実際のネットワークの利用状況を正確に把握し、必要な帯域幅を算出しましょう。そのうえで、現在の契約内容が適切かを確認し、帯域が不足しているようであれば、より広い帯域幅を持つプランへの変更を検討するのがおすすめです。
クラウド回線自体に問題がなくても、ネットワーク機器の性能が不足していると、通信速度遅延の原因になる場合があります。
ルーターやLANケーブルが古かったり、処理能力が低かったりすると、クラウドサービスの利用などで増えた大量のトラフィックを処理しきれず、ネットワークの速度低下や遅延につながってしまいます。
導入から年数が経過している機器は、現在の通信速度規格に対応できていないかもしれません。
現在使用しているルーターやLANケーブルなどのネットワーク機器の仕様や導入時期を確認し、機器の性能不足や老朽化が疑われる場合は、より処理能力が高い最新機器への交換を検討しましょう。新しい機器はより高速な通信規格に対応しているため、交換するだけで通信速度が改善される可能性があります。
クラウド回線や社内のネットワーク機器に問題がない場合でも、利用しているクラウドサービス自体の性能不足が原因で、動作が遅く感じられることがあります。
クラウドサービスは、事業者が提供するサーバー上で稼働しています。利用しているサービスのサーバーの処理能力が低いと、ユーザーからのリクエストを処理するのに時間がかかるため、応答が遅れてしまうのです。
現在利用しているクラウドサービスのプラン内容を確認し、サーバーの性能不足が確認できた場合は、より高性能なサーバーを利用したプランへの変更を検討しましょう。プラン変更ができない場合や、変更しても十分な改善が得られないときは、別のクラウドサービスへの乗り換えが必要な場合もあります。
企業のシステム・サービスのクラウド化やリモートワークの普及で、ビジネスは大きく変化しました。このような流れのなか、業務効率を高めるうえで注目されているのが「クラウドPBX」です。
クラウドPBXとは、従来オフィス内に設置していた電話交換機(PBX)の機能を、クラウド上で提供するサービスです。
クラウドPBX「SPICA(スピカ)」は、スマートフォンに専用アプリを入れるだけで、オフィスの固定電話機と同じように、会社の電話番号を使用できるようになります。インターネット環境があれば、外出先や自宅からでも会社の代表番号で電話をかけたり受けたりできるため、テレワーク環境の構築に最適です。
また、拠点間や社員同士の通話を内線化すれば、その間での通話料は無料になるため、通信コストの削減につながります。SPICAは、利用端末がスマートフォンのみなら初期費用が無料です。お持ちのスマートフォンやパソコンなどを利用できるため、固定の電話機や電話回線を用意する必要がなく、導入コストがかかりません。
さらに、総務省の通話品質基準で「最高基準クラスA」を獲得するなど、安定した通話環境もSPICAの特徴です。
自由な働き方に合わせて業務のクラウド化を進めたい、コストを抑えて高品質なクラウドPBXを利用したい場合はぜひ、SPICAをご検討ください。
本記事では、クラウド回線の基礎知識から選び方、速度改善のポイントまでを解説しました。クラウド回線は、今や多くの企業にとって重要なITインフラの一部です。
さまざまな選択肢があるなかで、自社の業務内容や求めるセキュリティレベル、許容できるコストなどを総合的に判断し、最適な接続方式や帯域幅を見極めることが重要になります。導入後に速度の問題が発生した場合は、帯域や接続機器、利用サービスに不足がないか一つずつ確認し、適切な対処を行ないましょう。
クラウド化の流れで注目されているのが、クラウドPBXです。クラウドPBX「SPICA(スピカ)」は、利便性・操作性の良さや通話品質、コスト削減の面から多くのお客様に選ばれています。
企業の業務効率の向上や通信環境の見直しをご検討の際は、SPICAをぜひご活用ください。
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